矯正治療のリスク・副作用

1.治療中に痛みが生じる。

 歯に人為的に力を加えると、歯の根の周りに炎症が起き、治療後1週間は、食事中に痛みを感じます。この痛みは、長くても1週間で消えます。また、装置が口の中の粘膜に当たって痛みを感じることもあります。

2.歯根吸収

 歯の移動に伴い、骨に埋まっている部分(歯根)が吸収して短くなることが有あります。矯正治療の70%に歯根吸収が見られると言われており、残念ながら避けがたいものと考えられます。ただ、多くは、歯の1/3ほどにとどまっており、治療後に大きな問題が出るわけではありません。

3.虫歯、歯周病になる可能性

 矯正装置の周囲は、食べ物の残渣がたまりやすく、適切な日々の歯磨きを行わないと虫歯や歯周病になる可能性が高まります。来院ごとにケアーを行いますが、日々の手入れを行わないと防ぐことができません。場合によっては、治療を中断することもあります。

4.治療後に歯の根元に三角の隙間ができることが有る。

 歯の移動とともに歯が平行に並んでくると、歯の根元に隙間が目立つようになる場合がある。これは、適正な歯の動きと適正な口腔環境ですが、患者さんにとっては、気になる問題です。

5.顎の痛みが出ることが有る。

 顎の問題(顎関節症)は年齢(思春期以降)、性差(女子)などで発現率が上昇するため、必ずしも矯正治療との関連があるとは言えませんが、治療中に顎の問題が生じることが有ります。この場合、極力、顎への負荷を軽減することを検討し、それらに対する治療を優先するなどの対応が必要になり、その分治療が長引くことが有ります。

6.治療後、後戻りが起こる。

 矯正歯科治療後、歯の位置は不安定で、再発や変化を防ぐために保定装置を入れて長期の管理が必要です。歯自身が生理的な状態へ戻るには3から4ヶ月の期間が必要であると言われています。さらに、歯の周りの歯肉の再構築には1年以上の期間を要するとされ、これらの歯肉の線維からの力は歯を元の方向への移動をもたらすと考えられています。また、治療後の歯は新たな位置で舌、口唇、頬よりの力と咀嚼筋の咬合圧を受けており、それらの適応に一定の時間が必要なので、治療後の保定装置の使用はとても重要です。

7.治療が長期になる。

 歯を動かすことはとてもデリケートで、早く動かすことができません。歯を動かすことは歯の周りに負担をかけるので、動かした後に歯に休息を与えることも必要です。よって、力を加える間隔を4週ぐらいにするので、必然的に治療が長期化します。

8.成長によって治療法の変更をしなければならない場合がある。

 人の成長は、完全に予測できるものではないので、成長の度合いによっては、完全に成長が止まってから、再度、治療方針を立てることもあります。このようなことにならないよう、治療前に様々な検査やご家族の情報を教えていただくこともあります。

9.治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。

10.装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。

11.歯の異常

ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。また、歯を動かすことで神経が障害を受けて歯の神経が壊死することがあります。

12.顎変形症治療のリスク

①顎変形症治療は手術を伴うので、誰でもできるものではありません。体に疾患がある方は、場合によっては治療できない場合があります。このため、治療前に全身のスクリーニング検査をします。

②手術を伴うので、10日から14日ぐらいの入院期間が必要です。まとまったお休みが取れない方は、治療ができない場合があります。

③手術後、唇周辺に感覚の麻痺がおこることが有るります。この麻痺は、通常半年ぐらいで回復します。

④手術の適応ですので、可能性は低いですが、生命に影響を及ぼす結果が起こることが有ります。このようなことがないように、術前、術中、術後の管理を徹底した医療体制が必要です。

13.その他

 患者さん自身や保護者の方の理解がないと長期の治療に耐えられません。よく、自問自答して治療を開始することが大切です。